前回の記事では、「経営計画書は単なる書類ではなく、経営の羅針盤である」という話をしました。創業の出発点は“思いつき”ではなく、「なぜ自分がこの事業をやるのか」という目的の明確化です。
では、次に考えるべきは——「そのアイデアは、誰の、どんな課題を解決するのか?」という問いです。
創業のアイデアは、頭の中では輝いて見えても、市場の中に置くとすぐに現実が見えてきます。競合の存在、顧客の購買行動、価格の相場、自社の強みの活かし方…。ここを曖昧にしたままでは、せっかくのアイデアも“自己満足の企画”で終わってしまいます。
今回は、創業アイデアを「市場の中で生きる形」に磨くための視点を紹介します。SWOT分析やアンゾフのようなフレームワークを使う前に、まずは「競合・顧客・自社」の3点を現実的に見つめ直すことから始めましょう。
競合分析:誰と比べられているのかを知る
創業者が最初に陥りやすいのは、「うちには競合がいない」という思い込みです。顧客は常に「他の選択肢」と比較して行動しています。たとえ同じ商品カテゴリでなくても、顧客の“目的”を満たすものであれば競合になります。
たとえば、あなたが手作りの焼き菓子を販売するとします。その競合は、同じ焼き菓子店だけではなく、「スーパーのスイーツコーナー」や「コンビニスイーツ」「カフェのデザート」かもしれません。顧客の“甘いものを食べてリラックスしたい”という目的を満たすなら、すべて競合です。
まずは、「顧客があなたの商品を買わないとき、どこで代わりを得ているのか」を考えることが出発点です。これが競合分析の第一歩になります。
ポジショニング:どこで戦うかを決める
競合を把握したうえで、自社が市場の中でどの位置に立つかを決めるのがポジショニングです。価格帯、品質、サービスの個性、提供スピード、体験価値など、どこを軸に差別化を図るかを明確にします。
ポジショニングを決める際に有効なのは、「誰に」「何を」「どのように」届けるかという三つの視点です。
- 誰に: 顧客像を明確にする。年齢・性別だけでなく、価値観や購買動機まで掘り下げる。
 - 何を: 顧客にとっての価値を定義する。単なる商品特徴ではなく、「どんな悩みを解決するのか」を言語化。
 - どのように: 伝え方・提供方法・チャネルなど、体験の設計を考える。
 
この3点を整理すると、「あなたのビジネスがどの場所で輝くのか」が見えてきます。狙う市場の“ど真ん中”に行くのではなく、少しずらして独自のポジションをとるのが創業初期の成功パターンです。
キャッシュポイント:どこで収益を得るかを設計する
創業初期にありがちな失敗は、「売上=収益」と考えてしまうことです。実際には、どの段階で利益が発生し、どの活動がコストを押し上げているのかを整理する必要があります。
たとえば、ECビジネスであれば、初回購入よりもリピート購入の方が利益率が高いことが多いです。サービス業であれば、単発契約よりも継続契約(サブスクリプションや顧問契約)が安定収益につながります。
このように、自社にとってのキャッシュポイント(収益が生まれる接点)を明確にしておくことで、どの活動に力を入れるべきかが見えてきます。
顧客が自社を選ぶ理由を明確にする
最後に問うべきは、「なぜ顧客は、あなたから買うのか」です。これは単なるコピーライティングの話ではなく、ビジネスの本質に関わります。
価格ではなく、体験・安心感・ストーリーなど、「機能以外の価値」をどう作るか。創業期はここを意識することで、規模の大きい企業との差別化ができます。
自社のプロダクトやサービスの“選ばれる理由”を言語化しておくことは、後に行う販促・採用・資金調達など、あらゆる場面で効いてきます。
まとめ:創業アイデアを市場で磨くということ
創業は「思いついたことをやる」ではなく、「市場の中で選ばれる形に整える」ことです。競合・顧客・自社の3つの関係性を整理することで、初めて「計画」と呼べるものになります。
もし「自分のアイデアをどう磨けばいいかわからない」と感じたら、ぜひご相談ください。私たちは、創業者の頭の中にある構想を言語化し、計画に落とし込むところから支援しています。
  