これまでの記事では、経営計画、商品・サービス設計、資金計画、販路開拓、経営管理など、創業に必要な具体的ステップを順に見てきました。
しかし、数多くの創業相談に関わる中で感じるのは、創業の成否を最終的に分けるのはノウハウではなく「考え方（マインド）」であるということです。
今回は、創業支援シリーズのまとめとして、「マインド編」をお届けします。
完璧な計画より「考え続ける姿勢」が重要
創業希望者の中には、「もっと準備が整ってから」「完璧な計画ができてから」と考え、なかなか一歩を踏み出せない方も少なくありません。
しかし、現実には最初から完璧な事業計画が描けるケースはほぼありません。市場も顧客も、やってみなければ分からないことだらけです。
重要なのは、計画を一度作って終わりにすることではなく、
仮説を立て、試し、振り返り、修正することを繰り返す姿勢です。
「思いつき」と「計画」の違いを理解する
創業時によくあるのが、「アイデアはあるが、それがビジネスとして成り立つか分からない」という状態です。
ここで重要なのは、思いつき自体を否定しないことです。多くの事業は、最初は小さな思いつきから始まっています。
一方で、思いつきをそのまま実行に移すのではなく、
- 誰の、どんな困りごとを解決するのか
- なぜ自分（自社）がそれをやるのか
- どうやってお金を生み出すのか
といった問いを通じて、「考え抜くプロセス」を経ることが、計画と呼べるレベルへの第一歩になります。
自分の「強み」から出発するという考え方
創業時には、「何をやりたいか」だけでなく、「自分に何ができるか」を冷静に見つめ直すことが欠かせません。
これは、知的資産経営の考え方にも通じます。
特別な技術や資格だけが強みではありません。
- これまでの仕事経験
- 業界知識
- 人脈
- 当たり前にできていること
こうした要素の組み合わせが、他人には真似しにくい価値になります。
成功する創業者に共通する思考法
成功している創業者に共通して見られるのは、「最初から正解を探さない」という姿勢です。
これは、近年注目されているエフェクチュエーション（Effectuation）の考え方とも重なります。
エフェクチュエーションでは、
- 今ある資源（知識・経験・人脈）から始める
- 失っても許容できる範囲で行動する
- 偶然の出来事をチャンスとして活かす
といった思考が重視されます。
「まず動き、学びながら方向を定めていく」姿勢こそが、創業初期には現実的なのです。
創業はゴールではなくスタート
最後に強調したいのは、創業はゴールではなくスタートであるという点です。
開業届を出した瞬間に成功が約束されるわけではありません。
むしろ、創業してからが本当の意味での経営の始まりです。
だからこそ、
- 分からないことを分からないままにしない
- 一人で抱え込まない
- 考えることをやめない
この姿勢が、長く事業を続けていく上で大きな差になります。
次回：行動編へ
次回のまとめ記事では、「行動編」として、
創業前後に実際に何から手を付けるべきかを、優先順位の視点で整理します。
創業を「一人で頑張るもの」にせず、必要なところは外部の力も使いながら、前に進んでいきましょう。
創業に関するご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください。